【お客様からのご質問】「一汁一菜、一汁三菜、三汁七菜、二汁五菜はどう違うのですか?」【しげよし】

2017/08/25

ブログで会席料理と懐石料理の違いなどについてお話をさせていただいたところ、お客様から「一汁一菜、一汁三菜、三汁七菜、二汁五菜などがありますが、それぞれどのような意味があるのか教えてください」というご質問をいただきました。今回は、日本料理の御献立の組み立て方についてご紹介いたします。
 
本膳料理の最高級が三汁七菜です
こちらのブログでも少し触れましたが、室町時代に「元服」など武家の儀式料理として完成したのが「本膳料理」です。本膳料理は、一の膳(本膳)から五の膳までが供されました。
 
●三汁七菜の御献立

一の膳(本膳) ご飯、汁物、香の物、坪、なます
二の膳 猪口(ちょく)、汁物、平
三の膳 汁物、小付、お造り
与の膳 焼物
五の膳 台引物

 
「坪」とはかぶせ蓋がついた器のことで、煮物や和え物が盛られます。「なます」は生の魚肉を細切りにし、酢で和えたものです。「猪口」は酢の物、和え物など、小さな器に盛るお料理で、「小付」は酒の肴や珍味を小皿に盛ったもの、「平」は平椀に盛る煮物です。「お造り」はお刺身、お魚を焼いたのが「焼物」です。
あまり耳にしないのが「台引物」。これはお客様へのお土産として、肴やお菓子を出すものです。蒲鉾や金とん、羊かん、伊達巻などちょっと甘めのものをお出しすることが多いです。
こうして見ると、三汁七菜は「お節料理」の御献立とよく似ていますね。これは、正月料理として出していた本膳料理を重箱に詰めるようになったのが「お節」の始まりだからだと言われています。

■三汁七菜が簡略化されたのが二汁五菜です
三汁七菜を簡略化した本膳料理の型のひとつが二汁五菜です。
 
●二汁五菜の御献立

一の膳(本膳)ご飯、汁物、香の物、坪、なます
二の膳 猪口(ちょく)、汁物、平
焼物膳 焼物

 
二の膳と三の膳を合体させて、五の膳を省略した形になります。今、「本膳料理」として料亭などで供されているものは、大抵が二汁五菜です。
一汁三菜は「和食」の基本です
一汁三菜は、日本の食事形式の特徴を表した言葉で、懐石料理の基本です。主食のご飯を主とした構成で、汁物1種類と菜(おかず)3種で構成されています。菜3種のうち、1種が主菜、2種が副菜です。
 
●一汁三菜の御献立(例)
主食ご飯、お赤飯、麦ご飯など
味噌汁、すまし汁など
主菜 魚、肉、大豆、豆腐などの大豆料理、卵などたんぱく質が豊富なお料理
副菜1野菜などの煮物。ビタミンを補います
副菜2ひたしやお漬け物、酢の物など。ご飯を美味しくいただくためのものです

 
一汁三菜はさまざまな食材を使うので、炭水化物、ビタミン、ミネラル、たんぱく質、脂質といった五大栄養素のバランスが絶妙です。また、ご飯とおかずを交互に食べることになるので、食べ過ぎを抑えることができます。日々の食卓でも、一汁三菜を念頭に置いていただくだけで、栄養のバランスが自然に整ってきます。
 
■シンプルライフの代表が一汁一菜です
最近、よく耳にします「一汁一菜」は、料理研究家の土井善晴先生が提唱されている御献立です。ご飯と具だくさんのお味噌汁を作れば、栄養のバランスは十分だし、子育てやお仕事で忙しい「お料理を作るのがたいへんと感じている人」も楽になれるという考え方です。
お味噌は、大豆や米、麦等の穀物に、塩と麹を加えて発酵させて作る発酵食品です。昔から「みそは医者いらず」という言い伝えがあるように、発酵によってアミノ酸やビタミン類が大量に生成された健康食品です。また、「1日3杯以上のみそ汁で乳がんの発生率が40%減少する」など、みその健康効果を実証した論文がたくさんあります。日々のお食事作りに悩まれている方は、ぜひ取り入れてみてください。お出汁の美味しい取り方をこのブログで紹介しておりますので、ご参考になれば幸いです。
 
かけがえのないひとときに、ご期待以上の品質をご提供させていただくために、これからもしげよしは和食文化について考え、勉強してまいります。お引き立てのほどどうぞよろしくお願いいたします。