【四季折々】銀杏について【しげよし】

2018/10/16

今年もイチョウの木が少しずつ黄金色に色付いてきました。イチョウ並木の散策を毎年楽しみにされている方も多いのではないでしょうか。
イチョウが色付くと、イチョウになる実・銀杏が、秋の味覚にかかせないおいしい季節になります。
ちなみに、イチョウも漢字では「銀杏」と書きますが、紛らわしいので、ここでは、イチョウと、その実「銀杏(ぎんなん)」とします。

■イチョウの歴史

イチョウは中国が原産といわれていますが、なんと2億年以上も前からありました。
1億5千万年前より古い動植物のほとんどが絶滅していることを考えますと、イチョウが2億年の時を経ているのは、奇跡的なことのように思えます。なんと生命力の強い植物なのでしょうか。
紅葉時の美しさだけではなく、成長が早く、環境汚染や寒さ、火に強いなどの理由から、日本では、街路樹として最も多く使われています。
寺院でも、イチョウの木はよく見かけますが、浅草寺で神木とされている木は、樹齢500年のイチョウの木です。東京大空襲の猛火から焼け残り、今も砲弾の後がしっかりと残っています。火に強いことを証明し、戦争の傷跡を後世に伝えてくれている奇跡のような木です

■銀杏の匂い

イチョウは、樹高が20~30mに生長し、4~5月頃に花が咲きます。
雄株と雌株があり、花が咲いた後に受粉し、雌株だけにオレンジ色の実が付きます。これが、銀杏です。
イチョウが色付く頃、どうしても気になるのが、何ともいえない独特の匂いではないでしょうか。黄金色に輝いているイチョウの木は美しいのですが、匂いが気になって、どうしても足早に通り過ぎてしまうという経験がおありかと存じます。
この匂いは、銀杏から発しています。
悪臭とも言える独特のにおいは、銀杏の酪酸とぺプタン酸という成分で、なんと足の悪臭と同じ成分だそうです。
この成分は、匂いだけでなく、直接素手でさわってしまうと、肌が炎症を起こし荒れてしまう危険性があるほど強いものです。
そこで、サルやネズミなど哺乳類全般が寄り付かず、食べられもしなかったため、イチョウの木は、長い間、生き残ったとも考えられています。
不思議なことに、名所ともなっているイチョウ並木には毎年多くの人々が集まり、ゆっくりイチョウ並木の美しさを愛でていますが、匂いは気になっていないような気が致します。これには理由がありました。こうした街路樹は、すべて銀杏が付かない雄株で統一し、匂いを気にせず、イチョウの紅葉をゆっくり楽しめる工夫をしているのです。

■銀杏の効用と注意点

銀杏は、お好きな方が多いほどの深い味わいだけでなく、大変栄養価の高い食材です。
主成分のビタミンには、抗酸化作用があり、新陳代謝を促し、新しい健康な皮膚を作り出し、美肌作りに役立ってくれます。疲労回復効果は言うまでもありません。
他には、カリウムが含まれますので、利尿を促し、ナトリウムや老廃物を排泄し、高血圧を抑制する効果が期待できます。
素晴らしい効果が期待できる銀杏ですが、大量に食べると、中毒症状がおき、最悪死に至る可能性もあるので大変危険です。
特に小さいお子様には注意が必要ですし、成人でも、10粒程度にしておいたほうが無難だと言われています。妊娠中の女性も、早産の可能性があるようですので注意が必要です。
こうした恐ろしい事態を引き起こすのは、銀杏に含まれるギンコトキシンという神経毒です。ギンコトキシンは、ビタミンB6と大変似ているため、脳がビタミンB6と間違えて体内にとりこもうとしてしまい、結果的にビタミンB6が欠乏してしまうという現象が起きます。
食べ過ぎると、ビタミンB6が欠乏したのと同じ状態になり、頭痛、吐き気、嘔吐、けいれんなどの危険な症状を引き起こしてしまうというわけです。

■銀杏拾い

イチョウの木の下で、銀杏を拾っている方をお見かけすることがありますね。少しの手間で、美味しく銀杏を頂けますので、是非銀杏拾いに挑戦してみてください。

拾う時にも、念のため、素手で触らず、割りばしか、手袋をして下さい。
拾った銀杏の簡単な種子の外し方は、水をいれた容器に拾ってきた銀杏をいれ、2〜3日ふやけるまで浸します。
ここからは、しっかりとゴム手袋をして作業します。何回も水をかえ、銀杏同士をこすり合わせることで、きれいに外側の種子が外れ、薄い茶色の殻を取り出すことができます。
これを、風通しの良い場所で、薄い茶色が真っ白になるまで2〜3日天日干しします。確認のためいくつか割ってみて水分がなければ、いよいよ加熱します。
加熱方法は、色々ありますが、最もお手軽なのは、電子レンジを使う方法です。
銀杏10個ほどを厚めの茶封筒に入れ、口を2回以上折ります。しっかりと折り返さないと飛び出すことがあります。
600Wの電子レンジで60秒ほど加熱してください。2~3個ポンポンとはじけたくらいができあがりの目安です。加熱しすぎますと、硬くなり美味しく出来上がりません。
全ての殻が加熱して割れるわけではないので、あらかじめハンマーで少し割っておいてもよいと思います。
こうして頂く銀杏は、本当に美味しいものですが、どうか食べ過ぎにはご注意下さい。
加熱した銀杏を数個、松葉串にさして、お食事に沿えてみて下さい。あっという間に、美しい秋の食卓になり、心豊かな時を過ごせそうです。
日本の四季折々の味覚を、是非食卓にも取り入れて、豊かな秋の実りを満喫してください。