【食材のこだわり】あしらいその1:掻敷【しげよし】

2017/10/03

 
食べて美味しいだけではなく、目で見て美しいのが和食のいいところ。私どもも、仕出しには必ず「あしらい」をして、目でも楽しんでいただけるようにしております。今回は、和食の「あしらい」のうち、掻敷(かいしき)についてご紹介いたします。
 
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■目にも美味しくしてくれるのが「あしらい」です
 
「あしらい」は、器に盛り付けたお料理を、いっそう引き立てる目的で添えるものです。単なる飾りではなく、お料理の味や栄養のバランスを取ったり、香りを添えたりして食欲を増す効果があります。また、全体の色を整えたり、季節感を演出したりする効果もあります。
「あしらい」には「掻敷(かいしき。改敷、皆敷とも書きます)」と「つまもの」があります。「掻敷」は、主に料理の下に敷く植物の葉などを意味します。「つまもの」は、お料理に添えるような形で横や正面、上に置きます。
 
■掻敷は古来より使われていました
 掻敷として今でもよく使われる柏の葉、朴の葉、椿の葉、笹の葉、椎の葉などは、古来より器の代用として使われてきました。万葉集には、飛鳥時代に有間皇子が「家にあれば笥(け)に盛る飯も草枕 旅にしあれば椎の葉に盛る」と詠んだ歌が収録されています。これは「家にいると器によそうご飯ですが、旅先なので今は旅の途中なので椎の葉に盛ります」という意味です。椎の葉が器の代用として使われていたことが読み取れます。また、筍の皮には殺菌作用があるので、おにぎりの包みとして使われてきました。
さらに、宮中の大御食(おおみけ・天皇のお食事)や内裏歌合(だいりうたあわせ・宮中で和歌を詠み合って優劣を競い合った遊び)において、沈香で作った舟をお皿に飾ったり、柳の枝を料理に添えたりしたという平安時代の日記が残っています。 目にも雅やかなお料理をという心は、古くから日本人に受け継がれてきたものなのですね。
 
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■青掻敷の代表が葉蘭と熊笹です
「掻敷」は料理の下に敷くもので、 植物の葉や花、実、枝などを使う場合を「青掻敷」といいます。なお、掻敷は食べられません。あくまでも添え物なので、どうぞご遠慮なくお残しください。もちろん、お持ち帰りになられても大丈夫です。
刺身やお寿司などによく使われるのが葉蘭(はらん)の葉の部分です。葉蘭はユリ科の多年草で、一年中葉が取れて育てやすく、常に綺麗な葉が揃います。1葉が50センチほどと長いので、刺身やお寿司などを盛り付けたり、包丁で飾り切りをして絵が模様を作る「葉蘭切り」の材料にしたり、お弁当の仕切り代わりに使ったりします。プラスチックでできたお弁当の仕切りを「バラン」と呼ぶのは、葉蘭に由来するともいわれています。葉蘭はかなりサイズが大きいので、最近ではもうふたまわりほどコンパクトな熊笹もよく使われます。葉蘭にも熊笹にも天然の保存効果、防腐効果があります。
熊笹は色がかなり出るので、洗剤で洗った後に熱湯に10秒ほど浸けた後、冷水に入れる「色出し」という作業をします。
 
■青掻敷は季節感の演出にもぴったり
 青掻敷は、季節感の演出にも使われます。春は筍の皮、ひば、楓(青紅葉)、葉の花、椿、芽吹いた枝などを使います。また、夏は勝負やあじさい、朝顔、ほおずき、若柿の葉などが定番です。秋は紅葉、菊、すすき、桔梗、無花果の葉、栗の葉やいがなどが美しいですね。冬は蜜柑の枝や柳、松葉や冬苺、山茶花(さざんか)をよく使います。
 
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■青掻敷には縁起物の意味もあります
 青掻敷は、縁起物もよく使います。たとえば、おせちによく使われる「南天」がそれです。「災いを転じて福と成す」すなわち「難転」と読み替え、災難に合わないようにという願いを込めます。お料理以外にも、家の鬼門にあたる方角に南天を植えることもあります。また、鏡餅に添える「ゆずり葉」は、新しい芽が出ると古い葉が落ちることから「譲り葉」の名がつきました。これを転じて、「親子代々相継ぎ子孫が繁栄するめでたい」葉といわれます。だいだいの実も「親子代々」からよく使われます。
 柏餅などに使うかしわの葉は新芽が育つまで古い葉が落ちないので、家系が絶えず末代まで栄えるという意味を込めて使います。これらの「縁起物」掻敷は、武家で重宝されて現代に伝わっています。
 
■掻敷には「紙掻敷」もあります
 天ぷらや焼物、和菓子の下に敷く白い懐紙や和紙などは「紙掻敷」と呼びます。余分な油を吸う、和菓子を飾ったり、包んで持ち帰ることができるようにしたりする役割があります。白い紙は非常に清浄なものとされ、神事には欠かせません。神聖で、さらに料理を引き立てる効果があることから、白い紙が使われるといわれています。
 
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■仏事では青掻敷も紙掻敷も使い方が変わります
 青掻敷では通常、笹の葉などの表が上に来るように使います。また、紙掻敷では紙の表が上に来て、手前の紙の辺が左上に伸びるように折ります。
 仏事などのときは、笹の葉などは裏返しにて使います。また、紙掻敷では紙の裏が上に来て、手前の紙の辺が右上に伸びるように折ります。
 
しげよしでは、仕出しの内容やシチュエーション、季節などに合わせて、最適な掻敷を使わせていただいております。舌はもちろん、目でもお喜びいただける仕出しでございます。
ご期待以上の品質をご提供させていただくために、これからもしげよしはおもてなしの心を追求して参ります。お引き立てのほど、どうぞよろしくお願いいたします。次回は、「あしらい」のつまものをご紹介します。