【四季折々】紅葉について【しげよし】

2018/10/31

 

日本は、四季があるからこそ美しいといわれますが、皆様がお好きな季節はいつでしょうか。

秋がお好きだという方も多いと存じます。秋がお好きな方に伺うと、秋の味覚が豊富なこと、そして何より、木々が色付く紅葉の美しさを楽しみにされているようです。

毎年、秋になりますと、紅葉を見に行く「紅葉狩り」ツアーが目白押しです。お気に入りの紅葉スポットや、行ってみたい紅葉の名所がきっとおありかと存じます。

紅葉を目に浮かべながら、紅葉にまつわる話をお楽しみ頂けたら光栄です。

 

■紅葉狩り

 

日本人は昔から自然を愛で、風情を楽しんでいたことが知られています。

「お花見」や「お月見」と並び、「紅葉狩り(もみじがり)」は、古来からの日本の文化です。

紅葉の名所で、紅葉を愛でる「紅葉狩り」ですが、何故「狩り」というのでしょうか。

「紅葉狩り」という言葉は、「万葉集」にも出てきます。つまり、1200年以上も前から使われていた言葉ということがわかります。

この「狩り」という言葉は、文字通り、狩猟をさす言葉でしたが、徐々にその意味が拡大解釈され、果物などの収穫にも使われるようになりました。その名残として、今でも、ミカン狩り、ブドウ狩りなどと呼びますよね。

それがさらには、草花を愛でることの意味でも使われるようになったようです。

こうした意味で使われるようになった由来としては諸説ありますが、二例ご紹介します。

平安時代の貴族たちが、文字通り、紅葉した木の枝を折り、手のひらにのせて鑑賞していたから、「狩り」と呼んだという説。

昔々の言い伝えで、人の心を惑わす「紅葉」という名の山にすむ鬼女を退治したという話があることから、「紅葉」を「狩る」、紅葉狩りという名称が残ったとする説。

後者の説は、歌舞伎で「紅葉狩」という演目にもなっています。

 

■紅葉は日本だけ?

 

紅葉する木は落葉樹だけです。落葉樹が多く存在している地域は、日本など東アジアの沿岸部やヨーロッパの一部、北アメリカの東部に限られてきます。つまり、この地域でだけ、紅葉が見られるということなのです。

日本だけではない紅葉ですが、日本の紅葉は、世界一美しいといわれます。では、海外と比べると、何が違うのでしょうか。

欧米の紅葉は、黄色を主体とした単色がほとんどです。それに対し、日本の紅葉は、黄色だけでなく、赤く紅葉する木も多くあります。常緑樹の緑色も加わり、色のコントラストが見事で、さらに美しく、印象的な景色となり、人々の視線だけでなく、心までも奪われてしまうというわけなのです。

 

■紅葉のメカニズム

 

葉が色づき始めるのは、日中の最低気温が8℃以下になった時、さらに5℃位以下になると、一気に紅葉が進むと言われています。

では、なぜ寒くなってくると、葉は色付くのでしょうか。

葉の緑は、葉にクロロフィルという葉緑素が含まれているので、緑色をしています。

寒くなって、日照時間が短くなると、葉の光合成の働きが弱まります。すると、木は、葉はもう不必要だと思い、葉を落とそうとします。葉を必要としなくなった木は、葉に栄養素を送り届ける必要がないと判断します。そして、離層といわれる組織により、養分や水分が葉に届く経路を遮断されてしまいます。

すると、緑色の色素であるクロロフィルが分解されていきます。

分解されたことにより、クロロフィルと同様に葉に含まれていたカルチノイドが初めて認識できるようになります。これこそが、葉の黄色の成分です。

赤の色素はもともと葉に含まれていないのですが、寒さが本格的になってくると、クロロフィルの色素がいよいよ消え、アントシアニンという赤の色素が、新たに成形される葉もあります。

こうして、葉の色が、緑から黄色、もしくは赤へと変化していきます。これこそが、紅葉です。

さらに、美しい紅葉が生れるにはいくつかの条件が必要です。

日中のお天気がいいこと、昼夜の寒暖の差が激しいこと、適度な水分が保たれていることなどです。台風など自然災害に見舞われないことも条件のひとつです。

紅葉は、様々な自然条件が複雑に絡み合って起こる、まさに、自然の神秘なのですね。

 

■おわりに

 

紅葉の終わるころ、もう一つの秋の楽しみがあります。落ち葉です。

落ち葉で一杯になった地面は、まるで落ち葉のじゅうたんのようです。落ち葉のじゅうたんは、美しいだけでなく、歩くと、様々な音を奏でてくれ、私たちを楽しませてくれます。

日本人が、感性豊かで繊細だと評されるのは、昔からこうした自然に恵まれ、自然を愛する心を持ち続けたからでしょう。

平安時代に命名された色を表す言葉に、赤朽葉(あかくちば)という言葉があります。まさに、美しい紅葉が終わり、落ち葉となった葉の色を表す言葉です。朽ちるという言葉は何かもの悲しさを感じますが、まさに、落ち葉には、美しさの陰にもの悲しさも感じられるような気が致します。

日本には、風流な行事が沢山あり、世界でも注目されてきていますが、言葉もまた、繊細な美しいものが沢山あります。

心打たれる美しいものが沢山見られる、感じられるこの時期です。紅葉が、まさにそうですね。是非満喫なさって下さい。