【食材のこだわり】ひじきについて【しげよし】

2025/04/12

■3月〜5月のひじきは柔らかく風味が良い■




ひじきの旬は主に春から初夏(3月~6月頃)です。
この時期に収穫されるひじきは、柔らかく風味が良いとされています。特に春の新芽は「芽ひじき」と呼ばれ、食感がやわらかで人気があります。ただし、ひじきは乾燥品として一年中流通しているため、季節を問わず手に入ります。

ひじきは、主に日本国内の沿岸部で採取されます。特に以下の地域が有名です

⚫三重県 伊勢志摩地域はひじきの名産地として知られ、品質の高いひじきが収穫されます。
⚫長崎県 対馬や五島列島など、きれいな海で育つひじきが豊富。
⚫岩手県や宮城県 東北の太平洋側でもひじきが採れ、震災復興の一環で養殖も行われています。
⚫静岡県や和歌山県 温暖な気候と清浄な海域が、ひじきの生育に適しています。

日本以外では、韓国や中国の一部でもひじきが採れますが、日本産のひじきは特に品質が高いと評価されています。


■ひじきの煮物に油揚げやニンジンを入れる理由■




ひじきを使った定番料理といえば、ひじきの煮物。
ひじきの煮物は、日本の家庭料理や精進料理に根ざし、シンプルな素材を組み合わせて「足りない部分を補う」調理法が特徴です。油揚げとニンジンは、ひじき単体では物足りない風味や色、栄養を補完し、満足感のある一品にするための定番食材として知られています。

地域や家庭でアレンジは異なり、大豆やこんにゃく、蓮根などが加わることもありますが、油揚げとニンジンは手軽で相性が良いため広く親しまれています。

そのほか、ひじきを使った定番料理として、

・戻したひじきと野菜をマヨネーズやポン酢で和えるひじきサラダ
・ひじきと具材を炒め、醤油やオイスターソースで味付けするひじきの炒め物
・戻したひじきと具材を米と一緒に炊き、醤油や塩で味を調えるひじきご飯

などがあげられます。
ひじきはカルシウムや食物繊維が豊富で、和食の定番食材です。どれも作り置きに適しており、家庭で手軽に楽しめます。


■ひじきを漢字で書くと?■




ひらがな表記が一般的なひじき。漢字でどう書くか、ご存知ですか?

正解は「鹿尾菜」。
見た目が、鹿の黒くて短いしっぽに似ているところからきていると、江戸時代に書かれた「本朝食鑑」に記載されています。

また、古典『伊勢物語』には、想いを寄せる女性に、男がひじきといっしょに次のような和歌を贈る話があります。

 「思ひあらば むぐらの宿に 寝もしなむ ひじきものには袖をしつつも」

(日本語訳) 私を思ってくださる愛情がおありなら、荒れた家でも満足です。あなたと二人、袖(そで)を重ね引き敷いて、心あたたかにそこで共寝(ともね)をしましょう (『新日本古典文学大系17』岩波書店より)

「引敷物」に「ひじきも(藻)」の意味を掛けた和歌です。
ひじきと恋愛の歌、現代人にはなかなかイメージが結びつきませんね。

その歴史にも思いをはせながら、旬の風味を味わいましょう!