お客様から「しげよしのお弁当がとても美味しいので、料亭に行ってみたくなりました。でも、料亭って一見さんお断りなんですよね?」というご質問をいただきました。ありがとうございます。今回は、料亭についてお話をさせていただきます。
■料亭は日本文化の集大成と考えています
一般に、個室で日本料理をお客様にお出しさせていただく飲食店を「料亭」と呼んでいるようです。歴史があるお店が多く、料理や器、おもてなしだけではなく、日本庭園やお店のつくり、床の間、床の間に置いてある美術品や調度品などもお楽しみいただけます。
旬のものをふんだんに使ったお品書きや器との調和、「室礼」(しつらえ)と呼ばれる飾りなど、四季折々の味を全身で感じていただきたいという思いが込められたおもてなしは、まさに日本文化の集大成ともいえるでしょう。
■決して「一見様お断り」ではございません
日本文化がぎゅっと込められた料亭を、若い方にもぜひご堪能いただきたいと私たちは考えています。とはいえ、料亭は一見さんお断りみたいだから紹介者が必要で、電話しても予約はできないのでは? とお考えになる方も多いようです。
そんなことはまったくございません。ご予約のお電話を頂戴できれば大変光栄に存じます。
お電話の際に、日時と人数だけではなく、ご予算やお席の趣旨などもご教示いただければ幸いです。お身内やお友達とのプライベート、ご接待、法事、お誕生日のお祝いなど、シチュエーションを伺えれば、その趣旨に合ったお席をつくらせていただきます。
会席料理は先付けからはじまって、前菜、お椀、お造り、煮物、焼物、揚げ物、お食事、甘味が出てまいります。一品お召し上がりいただいた後に次のお料理をお出ししますので、ひとつのお席はだいたい2時間ほどです。ご接待などで、電車のお時間などがある場合は、何時くらいにお店をお出になりたいかもお知らせいただけますと幸いです。
「どんな洋服を着ていけばいいのですか?」
というご質問もよく賜ります。仏事のときは仏事、ご接待のときはご接待など、お席の趣旨に合わせていただければ大丈夫です。基本的にはお座敷ですので、素足は避けていただいたほうが無難かもしれません。
また、よく
「お心付けはどうすればいいでしょう?」
とも伺います。私どもはサービス料を頂戴しておりますので、お心付けは必要ありません。
■ご要望をなんなりとお伝えください
「料亭ではいつも最後にご飯が出てくるけれど、焼物や揚げ物と食べたいのに」
というお声もいただいたことがございます。特に、最近はお酒を召し上がらないお客様が多いので、こういったご要望は多いのです。どうぞ、ご遠慮なく仲居に
「焼物と揚げ物と一緒にご飯が食べたいので、一緒に持ってきてください」
とお申し付けください。
また、
「料亭に行きたいけれど、小さい子どもがいるから行けない」
というお声もございました。料亭は個室ですので、小さな赤ちゃん連れのお客様でも周りの目を気にすることなく、ゆっくりとおくつろぎいただけるかと存じます。ご予約のときに、お子様連れである旨と、お子様のお歳、苦手な食べものなどどうぞご遠慮なくおっしゃってください。ご相談させていただきながら、皆様にゆっくりおくつろぎいただけるお席をつくらせていただきたいと存じます。
■会席料理の順番はフランス料理のフルコースとよく似ています
一般的にはまず「先付け」が出てまいります。こちらは、「お通し」みたいなもので、お酒と一緒にお出しさせていただくものです。お酒が苦手な方はその旨お申し付けいただければ、ほかの飲み物のご用意もございます。
次に、「前菜」が出てまいります。フランス料理の「オードブル」ですね。酒菜(さかな)の盛り合わせが多く、小さなお料理が数種類並びます。それから、フランス料理のスープにあたる「お椀」です。すまし仕立ての煮物椀で、主となる具材「椀種」(わんだね)、野菜など椀種を引き立てる「椀づま」、ゆずや木の芽などの「吸い口」などで構成されています。私どもは、「香り」もお料理を引き立てる重要な要素と考えておりますので、椀を開けていただいたときの香りもお楽しみいただければ幸いです。
「お造り」はお刺身の盛り合わせですが、薄切りにしただけではなく、昆布じめにしたり、さっとお湯をかけてくさみを取りながら皮の美味しさも楽しんでいただく「松皮造り」にしたりと、一手間かけさせていただくこともございます。
そして、「煮物」です。旬の食材と、そのお店が育んでまいりました出汁との調和を楽しんでいただけるお料理です。色鮮やかに煮る「青煮」、大根などを白く煮あげる「白煮」などがございます。
次に、旬のお魚の「焼物」です。柚子やかぼすの香りを生かした幽庵焼き(柚庵焼き、ゆうあんやき)など、料理人の技術があらわれる会席料理の花形料理、フランス料理の「メイン」にあたるものです。ごゆっくりお召し上がりください。
「揚げ物」は海のもの、山のものを揚げてございます。それから「お食事」(ご飯や汁物、香の物など)が出てまいりますが、焼物と一緒にご飯を召し上がりたいなどのリクエストは、どうぞお気軽にお申し付けください。
最後に「甘味」、デザートです。色や形などで、季節を感じていただけるよう心を込めております。
私どもが一番大切にしておりますのは、四季折々の空気です。お料理の内容や、床の間の掛け軸、生け花、女将の着物など、お客様に合わせてしつらえております。お花の名前など、ご不明な点がございましたらぜひご遠慮なくお声がけください。お客様にかけがえのないお時間をお過ごしいただくことが、私どもの喜びなのですから。